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台湾の対外直接投資の空間構造の変化とその影響要因

執筆者 戴 二彪
所 属 アジア成長研究所
発行年月 2025年3月
No. 2024-14
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内容紹介

1990 年代初頭以降、急速に拡大した台湾の対外直接投資(TOFDI)の空間構造は、産業構造の高度化や企業競争力の向上、さらには地政学的環境の変化とともに徐々に変容してきた。本研究では、TOFDI の空間構造変化とその影響要因を、1991~2000年(第1 期 )、2000~2008 年(第 2 期 )、 2008~2016年(第 3期 )、 2016~2024年(第 4 期)の 4期に分けて実証分析した。主な分析結果は以下のとおりである。
(1) 投資先国(地域)における中国語環境は、TOFDIの規模に対して一貫して統計的に有意な正の影響を与えている。
(2) 投資先国(地域)の国内総生産(市場規模)も、TOFDIの規模に対して一貫して統計的に有意な正の影響を示しており、とくに米中対立が激化した第4期において、その影響力が一層顕著になった。これは、台湾の半導体産業などが米国や日本といった西側の経済大国への投資を大幅に拡大した変化を反映している。
(3) 投資先国(地域)の賃金水準は、第1期においてはTOFDIの規模に対して統計的に有意な負の影響を与えていたが、それ以降の時期では統計的に有意な影響を示さなくなった。
(4) 最新の第4期では、台湾と投資先国(地域)との物理的距離が、TOFDIの規模に対して統計的に有意な負の影響を与えることが確認された。これは、台湾が東南アジアなど南部の近隣諸国との経済連携を重視する「新南向政策」の効果が現れ始めていることを示唆している。