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第19回「メディアとAGIの会」

アジア成長研究所(AGI)は、2013年7月から新聞、テレビ、ラジオ、電子媒体など北九州で活動するメディアとの交流会「MAGI会」(メディアとAGIの会、2014年9月までの「イクメ会」を改称)を原則として月1回開いています。私どもの活動内容を地元メディアの皆さまにご認識いただき、広く地域社会にお伝えいただく一助とするとともに、メディアの皆さまとの意見交換を通じて地域社会の最新の情報ニーズを把握し、今後の活動に役立てるためです。

第19回「MAGI会」(メディアとAGIの会)

2015.3.18(水)18:00~20:00@AGI会議室(北九州市・大手町ムーブ6階)

話題提供者:今井健一 主席研究員

テーマ:「少子高齢化とエネルギー消費」

出席メディア:RKB毎日放送、TVQ九州放送、毎日新聞社(50音順)

magi19-1 少子高齢化が家庭用エネルギー消費に与える影響について、北九州市と九州7県の県庁所在市の合計8都市について分析すると、人口総数は北九州、佐賀、長崎の3市が減少、福岡、熊本、大分など残り5市が増加していますが、65歳以上の高齢化率は8都市すべてで上昇し、世帯数も増加しました。逆に世帯員数は8都市とも減少しています。世帯員数を詳しくみると、1人暮らしの単独世帯数の割合は8都市すべてで増加しています。福岡市は2000年の43.1%から2010年には4.6ポイント増えて47.7%と8都市の中で圧倒的に一人暮らしが多い街ですが、高齢単独世帯の増分は2.3ポイントにすぎず、若年層など現役世代の一人暮らしも2.3ポイント増えました。一方、北九州市の単独世帯の割合は同じ期間に30.3%から34.6%へと4.3ポイント増えたうち、高齢者の増分が2.9ポイントに上りました。同市では2010年で高齢者単身世帯が12.5%、高齢夫婦世帯も11.4%と、いずれも8都市で最高の比率です。

 この8都市それぞれの世帯員数(平均値)と世帯員1人当たりの電力消費量(平均値)を2002年から2012年まで調べると、世帯員数の最少は1.8人で年間電力消費量は2159.9kwh、最大は2.77人で同1778.9kwhとなり、その差は381kwhと標準的な家庭の1カ月分の電力消費量に相当する差がみられました。

 少子高齢化に伴って、世帯員数が減り、家庭用エネルギー消費における「規模の経済」が失われつつあることが明らかになりました。家庭では電力、ガス、灯油などエネルギーを単独で使用するよりも、共有して利用する部分が大きく、世帯員数が増えれば、世帯員1人当たりのエネルギー消費は減っていきます。

 北九州のまちづくりへの示唆としては、家庭用エネルギーを効率的に利用するため①世帯員数に見合った広さの住宅に住む②個々人の省エネ努力に加え、エネルギーを極力共用する③同世帯の世帯員間のエネルギー共用には限界があるので、異なる世帯間でエネルギーの共用を可能にするような住宅あるいはコニュニティのシステムづくり――が必要だと思います。

 街中への集住を促す「コンパクトシティ」化を進めれば、①太陽光による集合住宅全体の暖房システムなどエネルギー共用の可能性が高まる②世帯員数に見合った住宅のダウンサイジングが促進できる③住宅の省エネ化(断熱化、遮熱窓、暖房設備など)を進める機会となる。

 IT(情報技術)を駆使してエネルギーを賢く効率的に利用するまちづくり「スマートシティー」は、例えば、電力需要が多い時には電力消費を減らし、需要が少ない時に電力を消費するインセンティブを与える仕組みだが、こうした取り組みは省エネ型のライフスタイルを人びとに促すが、それだけでは省エネ効果は小さく、高齢者には適応が難しい面がある。

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「異なる世帯間でのエネルギー共用が必要」と説く今井健一主席研究員

【主な質疑応答】
Q:異なる世帯間でのエネルギー共用はシェアハウスのようなイメージか?理屈は分かるが、普及には心理的な抵抗が予想されるが
A:プライバシーとの兼ね合いが難しいのは事実だ。しかし、太陽光によるマンション全体の暖房システムを導入するといった試みなども考えられる

Q:私の親など高齢者は広い住宅に1人で住み、エアコンや明かりをつけっ放しにするなどエネルギーの無駄遣いも多いが、これを注意しても聞かない……
A:そのとおりだ。私の親も同様だが、解決は容易ではないだろう

Q:コンパクトシティを進めようにも、先祖伝来の郊外の家から動きたくないという住民をどうするのか?
A:これも難しい問題だ。先進事例の富山市でも、郊外から街中への転居に同意する住民はある程度限られてしまうと聞いている

(協力研究員・江本伸哉)

 

更新日:2015年3月26日
カテゴリ:研究交流