研究プロジェクト

RESEARCH PROJECT

研究部

第一研究グループ

アジアー日本間の経済関係と現代的課題

日本とアジアとの結びつきやグローバル化など経済環境変化への対応に関する政策課題に焦点を当てて、その発生メカニズム・経済影響に関する学術研究を行うと共に、国内外の研究者と連携してアジアの共同発展に資するための政策研究を行う。研究テーマとしては、アジアと日本の間の人・物・資本等の移動からみた相互依存関係や国際情勢など近年発生した経済社会環境変化への対応策について学術研究と政策研究を推進していく。

グループ長 本間 正義
メンバー 柯 宜均
グエン・フン・トゥ・ハン

基本プロジェクト2023

日本の食料安全保障のあり方と九州の役割に関する研究

担当:本間 正義

特別教授

ロシアによるウクライナ侵攻で、世界の食料市場や肥料・飼料市場が不安定となり、日本でも農産物価格が高騰した。これを機に政府では食料・農業・農村基本法の見直しと同時に食料安全保障のあり方を検討している。

食料の安全保障はどのような視点に立つかで論点が異なる。短期の供給変動や価格変化であれば、その要因に関わるリスク対策を講じなければならない。また、長期の気候変動や地政学的リスクに対しては、情報の蓄積とそれを活用したモデル分析などが必要となる。さらに、最も国民の関心の高い有事の際の食料安全保障策は全く異なる視点で構築する必要がある。有事の際は食料のみの安全保障対策はあり得ず、エネルギーを含む総合安全保障と有事法制の中で食料の確保をしなければならない。

本研究では、食料の安全保障を様々な角度から検討し、短期、長期、有事における食料確保の方策について検討し、さらに九州農業がどのように日本の食料安全保障に寄与できるかをさぐる。

Heat-or-eatジレンマ: 気候変動に対応した日本の家計消費

担当:柯 宜均

上級研究員

地球温暖化は私たちの社会にとって深刻なリスクであり、異常気温は電力需要を増加させる可能性がある。エネルギー消費の増加は、気候変動リスク下での自らを守る支出ともいえるが、逆に家計のために他の消費の減少を招き、気候変動下で別の社会問題を引き起こす可能性がある。本研究では、全国規模のデータと北九州市のデータを用いて、極端な高温イベントと異常な低温イベントが家庭の電気、ガス、エアコン、ヒーター、食料、衣料、その他様々な非エネルギー家計消費に及ぼす非線形な影響を考慮した気温の影響を評価することを目的としている。また、富と貧困の異質性効果についても考察している。

ベトナムにおける情報通信技術(ICT)発展が女性の雇用に与える影響について

担当:グエン・フン・トゥ・ハン

上級研究員

女性の労働参加は、社会的結束と経済成長に不可欠である。女性の労働力が増えれば、食料や衣料品などの必需品の購入資金が増え、結果的に貧困を減らすことにつながる。しかし、女性はフルタイムの雇用にいくつかの障害を抱えており、そのため、非正規雇用やパートタイムで働くことが多い。女性の社会的地位向上のための努力にもかかわらず、女性の家事責任は変わっていない。

過去数十年の間に、ICTが新しい分野、仕事、社会的なネットワークを生み出すことで、経済や社会の進歩を促すことができることを、より多くの人々が認識するようになった。ICTは、雇用市場をより適応的で、オープンで透明性が高く、革新的で、あらゆる背景を持つ人に優しいものにしてきた。したがって、ICTは女性の労働力参加を促進し、新たな雇用を提供する可能性がある。

本研究では、女性の労働市場への関与への影響を評価するために、ベトナムの地方を横断してICTの成長を検証する。全国を代表するVietnam Household Living Standard Surveysのパネルデータを用い、固定効果モデルで関連を分析する。ベトナムのデータ不足を考慮すると、政策立案者は女性の労働市場を強化するICTの成長の原因を理解する必要がある。