研究プロジェクト

RESEARCH PROJECT

研究部

第二研究グループ

日本とアジア諸国が政策立案のために相互から学べる経験

日本はアジアで最初に現代の先進国になった国で、様々な成功と失敗を経験してきたが、成長しつつあるアジア諸国にとって、いずれも貴重な参考になる。この領域では、日本の重要な経済協力パートナーとしてのアジア新興国が日本の経済発展過程・関連政策から何を学べるかについて調査研究を行い、研究成果に基づいて政策提言を行う。

また、現代はもはや欧米のみから制度改革の洗礼を学ぶ時代ではなくなっている。この領域では、日本が近年成長著しいアジア諸国のダイナミックな経済成長と関連政策から何を学べるかについて調査研究を行い、研究成果に基づいて政策提言を行う。

グループ長 岸本 千佳司
メンバー 姚 瑩
彭 雪

基本プロジェクト2023

スタートアップ・アクセラレータの戦略分析(主に台湾について)

担当:岸本 千佳司

准教授

過去数年間,主に台湾のスタートアップ・エコシステムを研究し,その中でも特にアクセラレータ(Accelerator)に注目してきたが、2023年度の研究もこれを引き継ぐ。通常,アクセラレータの研究では,これをスタートアップ育成プログラムとしてのみ見て,その内容を主な分析対象としている(例えば,起業家育成プログラムの詳細やメンタリングの仕方・効果など)。

本研究は,アクセラレータを単なる育成プログラムではなく,独自の使命・目標やコンセプト,そして其々異なるポジショニングや組織能力を持ち,独自の競争優位を築き,使命・目標の達成を目指す一種の(戦略的に行動する)企業として捉える。育成プログラムも,こうした戦略の全体像の中に位置づけられ,その内容が規定されているのである。

一見類似に見えるアクセラレータも,詳細に観察すれば,戦略の内容はかなり異なっている。大まかにはスタートアップの立ち上げを支援しそのコミュニティの形成を通してエコシステムの発展に寄与することが役割であるとしても,そのやり方には個性があり,かなり異なっているのである。この違いと戦略の形成・実施の実情を詳細に観察することで,エコシステムが「システム」として機能する仕組みの形成・発展を理解することにも繋がると期待できる。

医薬品アクセスの経済分析:薬価・保険制度の効率性に関する評価

担当:姚 瑩

上級研究員

国全体の医薬品へのアクセスを改善することは、国民健康を向上させ、健康の不平等を抑制する上で重要である。医薬品アクセスの改善には薬価・保険制度の効率的な運用が不可欠である。公的医療保険制度では、どの医薬品に対して優先的に保険適用するかに関しては、国際的には医療技術評価(HTA: Health Technology Assessment)が主流である。

ただし、現状のHTAでは、個々の医薬品に対して保険適用の可否や価格付けを行うための分析がなされているが、基本医薬品リストに含まれる医薬品全体のアクセスへの影響については、その重要性は認識されているものの、現状では政策意思決定において必ずしも明示的には考慮されてない。また、薬価・保険適用リストを含む公的医療保険制度の変更が医薬品アクセスに与える影響についての実証研究は、企業、薬価、医療費に関する連結データが未整備なため、先行研究にもほとんど行われていない。

本研究の目的は、この課題に応えるため、医薬品リストの設計や変更等が医薬品アクセスに与える影響について定量分析を行い、薬価・保険制度の効率性を評価する。

「留学生○○万計画」の時代を、地方都市はいかに勝ち抜くか?
——外国人留学生の日本における就職先選択行動の特徴およびその影響要因に関する研究

担当:彭 雪

上級研究員

1990年代以降、優秀な外国人留学生の獲得をめぐって世界中の先進国が競争を繰り広げてきた。その中で外国人留学生は高度人材の候補生として捉えられ、政府や経済界から高い潜在価値を持つと認識されている。日本は1983年に「留学生10万人計画」、2008年に「留学生30万人計画」を実施してきた歴史を持つ。そして、「2020年に日本国内の外国人留学生を30万人に増やす」という目標は、2019年に前倒しで達成された。2022年8月、岸田首相は日本の留学生受け入れ数をさらに拡大することを提案した。同時に、留学生が卒業後に日本で活躍しやすいような環境を整備することも国の戦略として挙げられた。これらの現状を踏まえて、外国人留学生の日本での就職を促進することに、社会的な関心が集まっている。日本の地方都市にとっても、いかに外国人留学生を誘致し、活躍してもらうかが、競争力を高めるための重要な研究課題になっている。

そこで、本研究では、留学生の日本における就職地の分布特徴と就職地選択行動の影響要因について調査・分析を行う。また、こうした分析結果を踏まえて、日本および地元九州において外国人留学生の就職・定住を効果的に促進するために,若干の対策を提言する。