動画は下記リンクからご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=onRvWVSwcDg
テーマ:国際貿易 ―理論と実証研究の現在―
要旨:
国際貿易の理論は、リカードの2国2財1生産要素の比較優位モデルから、2国2財2生産要素のヘクシャー=オリーン・モデルを経て、収穫逓増や差別化、企業の異質性、そして貿易費用の内生的な役割が重視されるようになり、現実の貿易をより精密に説明する方向へと発展してきました。一方で、実際の貿易では、ますます多数国・多数財(多部門)を対象とした分析や、中間財貿易の重要性が高まっています。本報告では、まずこれらの理論的進展を整理し、次に実証研究の中心的枠組みであるグラビティ(重力)モデルの発展を簡単に紹介します。
翻って、現代の貿易は完成品の貿易よりも、部品・素材・サービスが国境を何度も越えて最終財が組み上がる工程間の国際分業、すなわちグローバル・サプライチェーン(GSC)を通じた中間財貿易が重要です。この現実を捉えるには、「どの国が何を輸出するか」だけでなく、「どの工程で誰と結びついているか」という結合構造を分析対象に含める必要があります。
そこで本報告では、国際産業連関表と構造グラビティ・モデルを用いて、各国・各産業の上流(素材・部品側)から下流(組立・最終需要側)までの位置を定量化し、さらに工程上の距離を表す指標を構築します。これにより、貿易関係の強さが、単なる2国間の物理的距離や経済規模(GDP)だけでなく、工程の近接性と補完性によっても規定されることを明らかにします。
分析から、第一に(平時において)、上流と下流の補完関係が強いほど貿易量は増加する一方で、分業が過度に進むと貿易量は減少すること(逆U字型の関係)を示します。第二に(平時において)、工程が近い産業ペアほど貿易量が顕著に増大することを示します。第三に(制裁下において)、貿易制裁は二国間貿易を有意に減少させるものの、上流・下流の結合が強い産業ではその負の効果が軽減されること、特に多国間制裁の下でも強い供給依存関係を持つ産業では貿易が維持される傾向があることを示します。 以上の結果は、制裁の有効性が「地理的距離(geography)」だけでなく、サプライチェーンの幾何学(geometry)に強く依存することを示しています。
言語:報告、資料ともに日本語
講師:早稲田大学商学学術院 教授 横田 一彦 氏

更新日:2026年3月23日
カテゴリ:セミナー