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Impacts of Declining and Aging Population on Urban CO2 Emissions:The Case of Japanese Cities

執筆者 今井 健一
所 属 国際東アジア研究センター
発行年月 2014年3月
No. 2013-11
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内容紹介

国立社会保障・人口問題研究所によると,日本の人口は,2010年そのピークに達した後徐々に減少し,2060年には9千万人を下回ると予測されている。これは1955年の人口とほぼ同じである。2010年~2015年の間の平均人口増加率は-0.08%となり,これは人口百万人以上の158ヶ国の中で142番目の増加率である。出生率の低下に伴い,日本の0~14歳の年少人口(そのピークは1955年)および15~64歳の生産人口(そのピークは1995年)が徐々に減少していく一方,65歳以上の高齢人口(そのピークは2040年)は増加していくことが予測されている。よって,特に対策がとられない現状が続けば,今後,日本の人口は減少し,そしてさらに高齢化していくこととなる。今までに経験したことのない人口減少・高齢化にどのように対応していくべきか?それに対する答えを検討するためには,まず人口減少・高齢化がどのような影響をもたらすのかを事前に検証していくことが不可欠である。しかしながら,人口減少・高齢化が経済面あるいは社会面へ及ぼす影響についての議論は高まってきている一方,それが環境面へどのような影響を及ぼすかについての議論はあまり高まっていない。一方,我が国の自治体に目を向けると,北九州市など政府から環境モデル都市あるいは環境未来都市に選定されている自治体を含め多くの自治体が経済・社会・環境面においてバランスのとれた発展をまちづくりのビジョンとしている。特に,自然エネルギーの普及や温室効果ガスの削減などは自治体が重要な役割を担っている吃緊の課題である。環境面での取り組みにおいて世界から高く評価されている北九州市は,20ある政令都市の中で一番早く人口減少・高齢化に直面し,2010年時点の高齢者人口割合(25.2%)は政令都市の中で一番高いこともあり,北九州市の人口減少・高齢化への取り組みは,我が国の他自治体のみならず,今後徐々に人口減少・高齢化を迎えるアジアの国々など世界からも注目されていくはずである。環境のみならず人口減少・高齢化にも配慮したまちづくりとはどうあるべきか,世界の環境首都を目指す北九州市にとって大きな課題である。