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日本における外国人企業家の地域分布と影響要因-外国人創業促進政策の効果に関する考察を兼ねて-

執筆者 戴 二彪
所 属 アジア成長研究所
発行年月 2022年3月
No. 2021-01
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内容紹介

本研究では,在留外国人に関する統計と聞き取り調査に基づいて,日本における外国人企業家の推移と特徴を考察し,その都道府県分布の影響要因および各地の外国人創業促進政策の効果を検証した。

経営管理活動を行っている在日外国人(外国籍)企業家は,主に「経営・管理」と「高度専門職1号ハ」」の2種類のビザ(在留資格)所持者から構成される。2015~2019年のパネルデータと固定効果モデルに基づいて分析した結果によると,都道府県の「経営・管理」ビザ所持者数や「高度専門職1号ハ」ビザ所持者数に対して,「地域総人口」,「一人当たり地域総生産」,及び「地域のインバウンド観光客数」はいずれも統計的に有意なプラスの影響を与えており,(主にサービス業を経営している)在日外国人企業家の数は地元マーケットの規模と成長性に大きく左右されている。一方,地域の外国人創業促進政策は,「経営・管理」ビザ所持者数に対して統計的に有意なプラスの影響を与えているが,「高度専門職1号ハ」ビザ所持者数への影響は統計的に有意ではない。また,都道府県の外国人企業家の年増加率に対しても,地域の外国人創業促進政策はプラスの影響を与えているものの,統計的に有意ではない。

外国人創業促進政策の導入時間はまだ短いので,その効果に関する検証はこれからも続ける必要がある。現段階の分析結果を見ると,外国人の創業をさらに促進させるためには,まず,規制緩和などを通じて,日本の持続可能な発展に寄与する投資需要・成長分野を一層創出する必要がある。また,各地の発展ビジョン・創業優遇政策に関する情報を国内外に効果的に発信するとともに,具体的な創業支援活動については,新興領域に関する専門技術力の高い20代~30代の留学生を中心に展開すべきである。