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韓国の金融システムと地域金融の実態把握―『環黄海地域における産業集積と地域金融の展開』の予備調査として

執筆者 木村 温人
発行年月 2001年 4月
No. 2001-08
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内容紹介

本稿は『環黄海地域における産業集積と地域金融の展開』【最終報告】作成のための予備調査:「韓国の金融システムと地域金融の実態把握」である。周知のように近年の環黄海地域における貿易や直接投資さらに技術交流等の経済実態は着実に発展し、今日この流れの中から「日韓自由貿易協定」等の動きも生まれてきている。電機・機械・自動車等の部品産業をはじめとする製造業部門の相互依存関係は、将来的にも、周辺地域を巻き込む形でさらに進展していくものと予想される。

しかしながら、この様な製造業部門の相互依存関係の進展に比べると金融部門の姿は旧来のままで、同地域発展のための新たな金融システム形成についての議論や研究は非常に少なく、その実体も大幅に遅れている。とりわけ同地域発展の主体でもある当該自治体や地域レベルの金融システム構築については皆無に近い。あらためて言うまでもなく、これまでのわが国の金融システムは中央主導のもので、地域や自治体主導の金融システムの構築はこれまで殆ど見られなかった。

今日、中央(国)の膨大な国債発行残高の累増等からも推察されるように、これまでの中央統制のシステムは今後そのままのかたちでは継続不可能であり、これに変わるシステムが求められている。すなわち、一国内的には中央政府を軸に据えずに地方と地方で独自に形成された分権的システムの構築であり、対外的にはそれは「中央政府を介さない国境を越えて得た地方主体の地域圏」である。仮に後者を、金融政策の立場から、この北部九州地域に引き寄せていえば、「環黄海経済圏と自立的金融システムの形成」と言うことになるのかもしれない。