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人口構成の高齢化と不平等度の変化 ―インドネシアにおける年齢層別不平等度―

執筆者 本台 進
発行年月 2006年 8月
No. 2006-11
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内容紹介

出生率が非常に高く人口成長率の大きかったインドネシアにおいても,1980年以降出生率が減少して,人口成長率も急速に低下してきた。同時に,平均寿命も伸び,人口構成において,20歳未満の若年層の割合が低下し,30歳以上の中高年齢層の割合が上昇してきた。この論文では,こうした人口構成の変化が不平等度に及ぼす影響を考察する。Susenasの世帯当たり総消費データをもとに,23歳から75歳までの年齢層を1歳刻みに分解して分析すると,人口高齢化の影響は不平等度を押し上げる結果となった。しかし,その効果はまだ小さく,各年齢層内の不平等度が大幅に減少したため,全体として不平等度は低下した。将来さらに人口構成が高齢化した場合に,不平等度を押し上げる効果がより大きくなってくることは明らかである。さらに,23歳から75歳の1歳刻みの年齢層別不平等度を見ると,20歳代の若年層においては年齢層内の不平等度が小さく,23歳基準の不平等度と統計的に有意差が現れなかった。しかし,30歳を越え45歳頃までにおいては,23歳基準の不平等度と統計的に有意な差が現れ,不平等度が急速に傾向的に拡大していることが明らかになった。すなわち,高齢者層になるほど,不平等度が急速に大きくなる。このため,少子化が続き,同時に人々が長寿になると,人口構成において高齢者シェアが大きくなり,不平等度が上昇する。今後,これが新たな不平等度を押し上げる要因となるであろう。