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中国における日系自動車メーカーの部材物流 ―広東省企業の事例を中心に―

執筆者 岸本 千佳司
発行年月 2006年 10月
No. 2006-17
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内容紹介

近年中国は,世界の主要な自動車生産拠点および市場として台頭しており,完成車メーカーのみならず部材サプライヤーの集積が進んでいる。従来のサプライヤー・システム研究の多くでは,それを支える物流システムには十分分析が及んでいないが,道路等物流インフラに問題の多い発展途上国,特に中国のような広大な領土をもつ国では,物流への取り組みが企業の競争力に重大な影響を与えると予想される。本稿では,中国の主要な自動車産業集積地の1つである広東省・広州市での調査に基づき,日系自動車メーカー(主に1次サプライヤー)が,部材物流システムを如何に構築・運営しているか,特に取引先との立地関係,物流上の困難やそれらのジャスト・イン・タイム(JIT)実施への影響はどのようであるかを分析した。この結果,サプライヤーは主要顧客である完成車メーカーに近接立地する傾向があるものの,かなり遠方の顧客とも取引がある。近隣の第1顧客に対しては比較的高頻度の納入が行なわれる一方で,それ以外の顧客に対しては低頻度納入か,遠距離取引では顧客近辺の中間倉庫を介した納入が実施されていた。また顧客納入用の製品在庫量,および2次サプライヤー等からの調達部材の在庫量も日本における場合に比し相当多めであり,JITの実施は極めて不徹底であることが判明した。物流上の困難としては,道路等インフラの不備に加え,規制・手続きの不透明さや地方政府主義など政治・行政上の問題が多く指摘された。