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インドネシアの社会経済調査と貧困ライン

執筆者 本台 進
発行年月 2008年 4月
No. 2008-01
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内容紹介

Susenas調査はサンプル世帯の世帯消費データを中心として収集されているため,貧困構造や所得格差の分析にとって利用価値は大きい。恒常所得仮説のもとでは,所得水準よりも消費水準のほうが個人や世帯の経済厚生の水準をより正確に反映している可能性が高いので,所得格差の分析にとって重要なデータとなる。また,この調査データで,教育による貧困削減効果や教育が所得格差に及ぼす影響の分析も可能となる。さらに,世帯構成員別の個人データが利用できることは,個人的特性と所得との関係を分析する際に非常に有効で,この調査のメリットとして大きい。すなわち本稿で示したように,この調査データを単純な集計分析をするだけでも,世帯主が農村で農業または商業セクターで就業し,彼等の教育レベルが小学校卒業以下の場合に,貧困世帯になる確率が著しく大きくなることが分かる。

しかし,Susenas調査の欠点もある。そのうち主なものを挙げると,その1つは,世帯所得の調査項目がないことである。もう1つは,貯蓄と負債の調査項目がないことである。もしこれらが入手できれば,さらに多くの問題について検討可能である。この調査データが持つこうした制約を考慮し,さらに必要に応じて他の資料からのデータを補完しながら利用することが重要である。