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韓国の都市発展と産業インフラの役割 −ソウルと釜山の事例から−

執筆者 猪原 龍介, 亀山 嘉大
発行年月 2009年 1月
No. 2009-04
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内容紹介

現在,韓国では,高付加価値製品の生産のために知識創造型の生産システムの構築に取り組んでいる。本稿では,このような韓国の経済システムの知識経済化のための地域産業政策に焦点をあて,地域産業政策が産業集積(産業クラスター)の形成や集積の経済を通じて,都市発展にどのような影響を与えているのかを,空間経済学のモデルにもとづき理論と実証の両面から分析を行った。ソウル特別市を中心としたソウル経済圏(京畿道と仁川広域市を含む)と釜山広域市を中心とした釜山経済圏(慶尚南道と蔚山広域市を含む)は,それぞれ韓国の1番目と2番目の規模を誇る都市地域であるが,両者の都市の成長力には格差が生じている。その要因を空間経済学の理論によって説明し,教育(科学技術)関係のインフラ整備が地域レベルの経済活動の立地動向にどのような影響を与えているのかを分析した。理論分析から,地域間アクセシビリティの改善とともに,①人口の大都市への集中が促されること,②各地域のインフラ整備が都市発展(技能労働者の流入)に与える影響が大きくなることが示された。そして,実証分析から,①道路投資による地域間アクセシビリティの改善によって,地域の開放度が高くなり,(技能)労働者の集中が促進されること、②教育(科学技術)関係の施設を源泉とした集積(波及)効果は,本質的には,各地域でプラスの効果をもたらしており,地域間アクセシビリティの改善によって,(技能)労働者の集中が阻害されないことが示された。ソウル都市圏と釜山都市圏は,どちらもこれらの効果を享受し,(技能)労働者を集中させているが,これらの効果は,釜山都市圏よりもソウル都市圏の方で有効に機能していることが示された。