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規模の経済と多層ネットワークを考慮した 広域物流拠点配置モデルの開発

執筆者 石黒 一彦, 西垣 雅弘
発行年月 2009年 3月
No. 2009-09
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内容紹介

物流効率化のため,物流企業による大規模積み替え拠点の整備を伴う拠点の集約化が進んでいる.しかし,現在進む集約化は局所的な交通・大気環境悪化を招くなどの問題も抱えている.本研究は現実に近い物流システムを表現した広域物流拠点配置モデルを構築し,政策分析を行った.本モデルでは積替や輸送における規模の経済,および物流ネットワークにおける多層性を考慮している点が特徴である.また,非凸性を持つ問題として定式化されたモデルを,分割配分法を改良して解を求める方法を提案した.具体的には,拠点での積替えを拠点入荷と拠点出荷を結ぶリンクとして表現し,そこに規模の経済が働くものとした上で,分割配分法の繰り返し配分において,初期は拠点固定費用を安くし,徐々にそれを高く更新する方法を示した.モデルの感度分析によると,パラメータの与え方が結果に大きな影響を及ぼしたことより.パラメータ推計の重要性が示唆されると同時に,パラメータに影響を与える政策や環境変化が物流体系に大きな影響を及ぼすことが確認された.第5章では解の検証を行った.本研究の方法では最適性は保証されないが,効率的に解が収束し,受容可能な解を導き出せることを確認した.シミュレーションでは,農水産品,雑工業品,軽工業品をそれぞれ個別に輸送する場合と比較して,共同輸送することで約2割の物流費用削減効果が得られることが推計された.シミュレーションで得た拠点立地分布は現状の物流拠点立地分布と概ね一致しており,本モデルの現状再現性を確認できた.第6章では都市物流で問題となっている交通渋滞を解消する方策として,規制と誘導の2つの政策を取り上げ,適用を行った.規制や誘導によって物流拠点の立地が大きく変化するなど,これら政策は対象地域全体の貨物流動に大きな影響を与える結果を得た.