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中国の「留学生企業」の躍進における地方政府の役割 -Suntech Power(無錫尚徳太陽能電力)の事例-

執筆者 戴 二彪, 岸本 千佳司
発行年月 2010年 3月
No. 2010-02
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内容紹介

近年,中国において留学帰国者によるベンチャー企業の設立がブームとなっている。ICT,バイオ・医療,新素材,光学,新エネルギー等多くのハイテク産業分野で留学生企業が続々と誕生し,その数は全国で数千件以上に達する。こうした留学生ベンチャーの大半は成長途上にある無名の企業であるが,国内外で認知されたスター企業も少なからず登場してきている。一方,こうしたベンチャー企業の支援を通じた産業振興は,中央政府ばかりでなく地方政府にとっても重要な課題である。留学帰国者による起業への支援に特化した「留学生園区」も各地に建設され,起業家に対する各種の支援策が講じられているが,成果の度合いは様々である。

本稿の課題は,地方政府によるベンチャー企業の支援が効果的になるために如何にすべきかを考察することである。このために,先ず,留学帰国者による創業ブームの背景と実情を概観する。さらに,長江デルタ地域に位置する無錫市で創業し,僅か数年のうちに太陽電池関連メーカーとして世界有数の地位に躍進したSuntechPower社(無錫尚徳太陽能電力)の事例を取上げ,その成長過程と無錫市政府による支援の詳細を明らかにする。無錫市政府のSuntechに対する支援は,慎重な誘致対象候補者の選定に始まり,事業スペースの安価な提供や補助金・税制上の優遇のみならず,資金調達,人事・経営,企業PR等,企業成長の各段階で必要とされるサポートを柔軟かつ実際的な形で提供するもので,大きな成果を上げたと考えられる。この事例分析から,リスクが大きくリターンがすぐには見込めない新産業の育成においては,地方政府は様々な側面で重要な役割を果たし得ること,グローバル経済時代における地域振興のためには,創造力とチャレンジ精神を持つ技術者・起業希望者の誘致と支援に地域の官民を挙げて取組むべきこと,支援を効果的に実施するためには,地方政府にも専門知識を持つ担当官が必要であること等の示唆が提示される。