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中国における地域間所得格差の動向(1978~2008 年) ―「西部大開発戦略」の効果―

執筆者 戴 二彪
発行年月 2010年 3月
No. 2010-07
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内容紹介

本稿では,1970年代後半以降の中国の地域開発戦略の推移を考察した上,最新の統計データと複数の測定方法を用いて,1978年~2008年の中国の地域間所得格差の動向ならび「西部大開発」戦略の効果を検証した。主な分析結果は次のように要約できる。(1)1970年代後半以降,中国の地域間所得格差は,1978年~1990年代初めの縮小,1990年代初め~2003年頃の顕著な拡大,そして2003年以降の緩やかな縮小,など3つの時期を経験した。(2)中国の地域間所得格差は,東部内格差,中部内格差,西部内格差,および3地域間格差,など4つの格差に分解できるが,主に東部内格差と3地域間格差の動向に左右されている。1978~2008年の全期間を見通して,中国の地域間格差全体はやや縮小したものの,3地域間格差は大きく拡大しており,縮小しつつある東部内格差に代わって中国の地域格差に寄与する最大成分となっている。(3)1978年~1990年代初めの中国の地域間所得格差の縮小は,主に東部の中所得諸省(広東省,江蘇省,浙江省,福建省など)における改革開放の先行と経済発展の成功による東部内格差の縮小の成果である。1990年代初め~2003年頃の顕著な格差拡大は,上海など高所得地域をはじめとする東部全体の改革開放の推進と高成長の持続による3地域間(東部と中部・西部)格差の著しい拡大の結果である。一方,2003年ごろ以降の緩やかな格差縮小は,東部内格差の持続的な縮小と3地域間格差の縮小の両方による結果であり,2000年ごろから実施された西部大開発戦略による格差縮小効果が2003年以降に現れ始めていることを示唆している。