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世界金融危機(2007 年)以降の中国における投資環境の変化

執筆者 戴 二彪
発行年月 2011年 3月
No. 2010-08
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内容紹介

本稿では,近年(特に世界金融危機以降)の中国の投資環境の変化,および,それに伴う対中直接投資の動向を考察した。主な結論は次のように要約できる。(1)2008年1月から外資優遇税制が廃止されたことによって,従来と比べ外資系製造業企業の税コストはかなり増加した。ただし,もともと外資優遇税制の適用対象ではなかったサービス企業および新しい優遇税制の適用対象となるハイテク産業・環境保護関連産業などに属する外資企業にとっては,むしろプラスの影響が大きい。(2)2005年以降,中国の対外輸出と経常黒字の急増を背景に,輸出企業の税金還付制度が見直された。税金還付率の引き下げによって,中国を生産拠点として海外市場向けの製品を生産する企業にとっては,輸出のコスト負担がかなり上昇した。2008~2009年に,世界金融危機による輸出企業への打撃を緩和するために,税金還付率の引き上げが数回実施されたが,今後,税金還付率の引き下げと引き上げが繰り返して行われる可能性がある。(3)2008年1月から労働者の権利を強化する新『労働契約法』が実施された。また,「西部大開発」戦略の推進に伴う内陸地域の雇用機会の増加などの要因により,一部の沿海省では,「民工荒」(現場労働力不足)の現象が起こっている。こうした変化は,日系企業を含む外資企業の労働コストの上昇をもたらしている。(4)急速な経済成長によって,中国は世界第三経済大国に躍進している。税コスト・労働コストの上昇・人民元高などにより,輸出指向の製造業企業にとっては中国の投資環境が若干悪化しているが,中国国内市場を狙う外資系企業にとっては,中国の投資環境の魅力が逆に増大している。投資環境の変化に伴い,対中投資総額における製造業のシェアが下がっているのに対して,非製造業セクターへの投資シェアは上昇しつつある。(5)外国対中直接投資の8割以上は,東部沿海地域に集中している。しかし,中国政府は内陸を重視する地域開発戦略を推進しており,中・西部への外国投資を奨励している。今後,製造業を中心に,対中投資は徐々に沿海から内陸にシフトする可能性がある。