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日本製造業企業のアジア進出における投資先決定要因 -2006~2009年アジア 11ヵ国・地域の投資環境ランキング-

執筆者 エリック D. ラムステッター, 岸本 千佳司, 戴 二彪, シャラザット・ビンティ・ハジアマド
発行年月 2010年 6月
No. 2010-12
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内容紹介

本稿は,製造業分野の日本多国籍企業による対アジア直接投資の投資先決定要因について分析するものである。既存文献では,投資受入国の経済規模と労働関連費用(生産性と労働力の質を考慮したもの),および日系企業の集積度が日本企業の立地選択に影響を与える最も重要な要因とされるが,他の多くの要因も影響している可能性があることを示す証拠もある。本研究では,こうした関連する多くの項目からなる投資先の魅力度を示すインデックスを考案した。これに基づき,アジアの11ヵ国・地域について,日本製造業企業からみた投資先としての魅力度をランキングした基準インデックスを作成し,また項目間のウェイト付けを変えた11種類の異なるシナリオを作成した。基準インデックスと11の代替シナリオのうちの9つでは,分析対象のアジア11ヵ国・地域は,魅力度の高さに応じて3つのグループに判然と区分された。即ち,最も魅力度の高い3ヵ国・地域(中国,シンガポール,香港),中程度に魅力的な5ヵ国・地域(マレーシア,台湾,韓国,タイ,インドネシア),および魅力度の低い3ヵ国・地域(インド,ベトナム,フィリピン)である。各グループ内での順位は,シナリオごとに多少変わってくる。このインデックスを用いたアプローチは,投資先決定に影響する可能性のある多くの要因を同時に考慮でき,また他の実証的方法に比べ,投資する企業ごとに重視する要因が異なることの影響をより詳細に検討出来るので,既存の経済学的研究を補完する重要な手段となる。