刊行物

PUBLICATIONS

アジアの国際医療観光:実態と成長要因

執筆者 戴 二彪
発行年月 2013年 3月
No. 2013-06
ダウンロード 797KB

内容紹介

本稿は,近年世界中から注目を集めている国際医療観光の動向を概観し,特にアジアの国際医療観光の実態と成長要因を考察した。主な考察結果は次のように要約できる。

(1)国際観光全体が拡大しつつある中,国際医療観光も速いペースで伸びている。国際観光全体の主要目的地は,欧州,アジア,米州(主に北米)となっているが,国際医療観光の主要目的地は,アジア,欧州,北米,中南米となっている。(2)国際医療観光の主要目的地の中でも,アジアのプレゼンスが最も目立っている。ただし,治療,健診,美容・健康増進といった 3 大医療サービスのうち,アジア諸国で一番伸びているのは美容・健康増進の関連サービスだと見られている。(3)アジアを訪ねる国際医療観光客のほとんどはアジア地域内の客で,特に国境が接する隣国からの訪問者が圧倒的に大きな割合を占めている。(4)アジアの医療観光を牽引している主要 5 カ国(マレーシア,シンガポール,タイ,インド,韓国)は,人口大国または高所得国と隣接する「地の利」を有する。これらの国とそれぞれの近隣諸国との間に,伝統的な文化(言語・宗教)・経済交流関係があるので,観光を含む人的交流は推進しやすい。(5)アジアの医療観光先進国における医療サービスは,先進国で留学・研修・勤務経験のあった高水準の医療専門人材や良好な医療施設に支えられ,コストが安いだけでなく,医療技術と医療サービス全体の水準もかなり高くなっている。(6)アジアの医療観光先進国において,医療観光産業は官民一体のプロモーション体制のもとで実施されており,自国の医療観光地としての国際知名度の上昇を効果的に促進している。それと同時に,これらの国では,自国の地理位置,自然資源,医療資源,社会文化資源を生かして,それぞれの医療観光の特色と発展目標を確立しつつある。