日本の一人当たりGDPの国際ランキングが過去30年間に、大きく低下してきたことの原因として「成果に基づいた報酬」が支払われる労働市場が成立しておらず、このため、労働の流動性が低いことが指摘されてきた。この問題の解決策を探るために本研究は、次の分析を行う。
1.労働者の権利を守りながら、労働の流動性を高める雇用法制の制度改革をどのように進むべきかを諸外国の先行例と比較しながら検討する。
2.最低賃金制の効果に関する各国における研究を比較し、日本での最低賃金制改革の可能性を検討する。本研究では、最低賃金制によって、仮に雇用が減らないとしても、高い最低賃金でのみ働く気がある人が雇用される一方、低賃金でも働きたいという人が労働市場に参入できないケースを分析する。
3.低賃金の外国人労働者の受け入れが、日本の低賃金労働者の労働移動にいかなる影響を与えるかも検討する。
多くの高所得国は、高齢化の進行および介護労働者不足という深刻な課題に直面しており、外国人介護労働者の受け入れは重要な政策手段となっている。しかしながら、外国人介護労働者が受入国の社会に及ぼす影響については、十分な実証的検証が行われていない。
日本では、高齢化率が世界第2位の29.3%に達し(2024年11月1日時点)、政府の公式推計によれば2040年までに約57万人の介護分野の労働力不足が生じると見込まれている。また、2008年より正式に受け入れを開始した外国人介護労働者(在留資格:介護、特定活動、技能実習、特定技能)は既に7万5千人を超えている。
本研究では、高齢化が進行し、外国人介護労働者の受け入れを拡大してきた代表事例といえる日本における、外国人介護労働者が社会にもたらす影響を明らかにする。特に日本人高齢者の健康アウトカムに焦点を当てて分析を行う。
2020年から2022年にかけては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により一時的な減少が見られたものの、北九州市における外国人住民数は2013年の11,009人から2025年には16,930人へと増加している。外国人住民の増加に伴い、地域住民の間における反外国人感情すなわち反移民感情が、外国人住民の地域社会への適応を妨げる大きな障害となる可能性がある。反移民感情は、子ども期の養育環境によって部分的に形成される可能性があるため、それがどのように形成されるのかを理解するには、子どもの家庭環境や社会経済的背景、および外国人住民に対する態度を分析することが重要である。本研究では、北九州市の小学生から高校生を対象に、外国人住民に対する感情に影響を与える要因を分析し、その成果を通じて、地方自治体における多文化共生政策の設計に示唆を与えることを目指す。