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第21回「メディアとAGIの会」

アジア成長研究所(AGI)は、2013年7月から新聞、テレビ、ラジオ、電子媒体など北九州で活動するメディアとの交流会「MAGI会」(メディアとAGIの会、2014年9月までの「イクメ会」を改称)を原則として月1回開いています。私どもの活動内容を地元メディアの皆さまにご認識いただき、広く地域社会にお伝えいただく一助とするとともに、メディアの皆さまとの意見交換を通じて地域社会の最新の情報ニーズを把握し、今後の活動に役立てるためです。

第21回「MAGI会」(メディアとAGIの会)

2015年6月16日(火)12時~13時30分@AGI会議室(北九州市・大手町ムーブ6階)

話題提供者:田村一軌 上級研究員

テーマ:「北部九州における旅客の空港選択行動と福北リムジンバスの可能性」

出席メディア:朝日新聞社、RKB毎日放送、西日本新聞社、読売新聞社(50音順)

magi21-1 北部九州の福岡空港と北九州空港を比較すると、福岡空港は2008年から2011年にかけて羽田線の年間旅客数がいったん減少しましたが、2012年以降ふたたび増加し800万人近くまで回復しています。一方、北九州空港は2006年の沖合の新空港への移転後、ほぼ110万人台前後で推移しています。北九州空港は福岡空港の羽田線旅客を十分に取り込んだとは言えず、まだ福岡空港の旅客需要を取り込む余地があります。
福岡空港は滑走路が1本しかないため、1滑走路当たりの着陸回数(2011年)は年間7万7984回と日本の幹線空港の中で最も多く、離着陸の容量は限界に達しています。国は現滑走路の近くに並行してもう1本滑走路を増設する計画ですが、その完成後も管制や安全上の制約から離着陸容量は現在の1.26倍までしか増やせません。このため、福岡空港は遠からず再び容量限界に達するとみられ、これを補完する空港として北九州空港の利用が注目を集めています。福岡空港は騒音規制のため、深夜・早朝は利用できませんが、北九州空港は海上の24時間空港のため、夜9時以降に羽田を出て北九州に着く便が3便、早朝に北九州を発って朝一番早い7時41分羽田に着く便もあります。福岡都市圏の人々にこの深夜・早朝便を利用してもらうため、福岡県は2014年に発表した「空港の将来構想」で福岡空港の発着枠を超える航空便(特にLCC=格安航空会社)を北九州空港に誘導し、その交通手段として福岡都市圏と北九州空港を結ぶ「福北リムジンバス」を導入する方針を打ち出しました。実際に「福北リムジン」が7月17日から片道1000円、所要時間73分で深夜3便、早朝1便運行を始めます。
 国土交通省が2011年に実施した「航空旅客動態調査」によると、北九州空港利用者は①目的地が山口から大分まで広範囲に及ぶ②交通手段を自家用車に依存している(約6割)③深夜便利用者は利用目的、日帰り、若年層が多い――ことなどが分かりました。
このため、福岡都市圏の若者の東京圏への旅行需要を北九州空港が「福北リムジン」の運行によっていかに拾い上げるかが課題です。ビジネス客の取り込みも大きなテーマです。
一方、私(田村一軌)が関東1都3県または福岡県在住で過去1年間に福岡~羽田線を利用した人310人を対象に2015年3月に実施したアンケート調査によると、北九州~羽田線の認知度は1都3県で63.2%、福岡県で73.5%にとどまりました。約4割の人は北九州から羽田に行けることを知らないわけです。北九州~羽田線の深夜便の存在を知っている人は1都3県で27.7%、福岡県で43.9%だけでした。同線の早朝便も1都3県で23.9%、福岡県で31.0%と、あまり知られていません。
「福北リムジンバス」の利用意向(片道1000円の場合)については、1時間以内なら利用する人が20.9%、深夜・早朝という条件付きで利用する人が19.6%、利用しない人が59.5%でした。それなりの人が利用してもいいと考えていることが分かりました。所要時間60分として運賃が1000円の場合、「利用する」が20.9%、「深夜・早朝という条件付きで利用する」が19.6%、「利用しない」が59.5%でした。
北九州空港の認知度は高くないですが、「福北リムジン」の利用意向は低くないことが分かりました。今後はリムジンのさらなる増便が望まれます。リムジン運行をステップに将来は、より利便性の高い福岡都市圏・北九州空港直結のアクセス鉄道の建設が検討課題になると思います。

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「北九州空港の認知度は高くないが、『福北リムジンバス』を利用したいと考えている人は少なくない」と説明する田村一軌・AGI上級研究員

【主な質疑応答】
Q:「北九州空港がLCCを誘致する第二空港として機能する可能性はあるか?」
A:「新聞報道によれば、LCCからすでに(北九州空港への)就航の打診があると福岡県がコメントしている」

Q:「福北リムジンは採算が取れるのか?」
A:「40人乗りのバスでも、10人くらい乗れば採算に乗る。不足した場合は福岡県が補助すればいい。採算が取れて維持される可能性はあると思う」

Q:「アクセス鉄道の建設コストや所要時間の試算は?」
A:「小倉駅から足立山をぶち抜いて北九州空港と結ぶ新幹線を通せば、建設費は900億円、所要時間は小倉駅から8分、博多駅から直通で25分と聞いている」

Q:「アンケートはどのようにして実施したのか?」
A:「私が調査会社に依頼した。調査会社が自社の会員の中で条件に合った人を年齢、性別が偏らないように抽出してインターネットを通じて調査した」
         

(協力研究員・江本伸哉)

※発表資料のダウンロードはこちらから(10.85MB)

 

更新日:2015年7月15日
カテゴリ:研究交流