メディアとAGIの会

第22回「メディアとAGIの会」

    アジア成長研究所(AGI)は、2013年7月から新聞、テレビ、ラジオ、電子媒体など北九州で活動するメディアとの交流会「MAGI会」(メディアとAGIの会、2014年9月までの「イクメ会」を改称)を原則として月1回開いています。私どもの活動内容を地元メディアの皆さまにご認識いただき、広く地域社会にお伝えいただく一助とするとともに、メディアの皆さまとの意見交換を通じて地域社会の最新の情報ニーズを把握し、今後の活動に役立てるためです。

    第22回「MAGI会」(メディアとAGIの会)

    2015年10月29日(火)18時30分~20時35分@AGI会議室(北九州市・大手町のムーブ6階)

    話題提供者:韓 成一・AGI上級研究員

    テーマ:「日中韓3国間自動車部品貿易の最近動向」

    出席メディア:RKB毎日放送、NHK、TVQ九州放送、西日本新聞社、毎日新聞社、読売新聞社(50音順)

    magi22-1 最近、日韓自動車メーカーの中国進出、現地生産が活発です。それに伴って自動車部品メーカーも中国に進出し、部品の現地調達が進んでいます。こうした日韓自動車・部品産業のグローバル展開により、近年、日中韓3国間の自動車部品の貿易動向に変化が生じています。
     まず日韓間では、2013年に初めて韓国の対日輸出額が日本の対韓輸出額を上回り、韓国の対日輸出超過(出超)となった。その要因は①2008~2012年のいわゆる「超円高・ウォン安」対策として日本の自動車メーカーが韓国製部品の調達を増やしたこと、②2011年3月の東日本大震災で部品のサプライチェーン(SC)途絶を経験した韓国自動車メーカーが、リスク分散のために韓国製部品の調達を増やしたことにあります。

     日中間では、日本の対中出超という基調に変化はありませんが、出超額そのものは2010年以降、急速に縮小し、中国の対日輸出が急増しています。これは①日産・トヨタなど大手自動車メーカーの中国生産拡大に伴い、部品メーカーの中国進出が進んだ分、日本からの対中部品輸出が減少したことに加え、②中国生産を始めた日系部品メーカーが日本から素材や半製品を中国に送り、中国工場で完成品に仕上げて日本に送り返す「逆輸入(Buyback)」が増えているからと推察されます。

     韓中間では、韓国の対中出超が年々拡大しています。しかし、2006年からは中国の対韓輸出も増加傾向にあります。その主因は2002年から現代・起亜自動車グループの中国生産が始まったことにありますが、中国に進出した韓国系部品メーカーによる中国製部品の「Buyback」もかなり増えていると推測されます。
     
     ただ、日韓間の部品貿易をもう少し詳しく分析すると、日本の対韓輸出はギアボックス、エンジン部品など高付加価値品が多いのに対し、韓国の対日輸出はロードホイール、シャーシ部品など比較的低付加価値品が多いのが特徴です。ただし、日本から韓国へのギアボックス輸出額は2000年から2014年の15年間に半減しています。韓国製部品が急速に力をつけていることが伺われます。
     また、貿易統計の問題点も明らかになりました。例えば、近年、自動車への組み込みが急速に進んでいる電装部品・半導体部品などのいわゆる電子部品とタイヤなどは現状では自動車部品に分類されていないのです。自動車のエレクトロニクス化、電動化が急速に進み、さらには自動運転車の実用化が日程に上るなど自動車の構造や制御方法が大転換期を迎えつつある中で、国際貿易統計の分類が現実の変化に追いついていないのです。自動車部品の定義を改める必要があります。


    magi22-2
    韓国の対日自動車部品輸出が2013年から日本の対韓輸出を上回っていることについて「一喜一憂する必要はない。電子部品など重要な品目が貿易統計から欠落している」と指摘する韓 成一・AGI上級研究員(2015/10/29@第22回MAGI会)

    【主な質疑応答】
    Q:「日韓間の貿易を韓国の統計を用いて分析したのはなぜか?」
    A:「韓国の統計開示が一番早いからだ。3か月程度で前年の統計が公表される。日本の貿易統計は公表まで早くても半年程度かかっており、使い勝手が悪い」

    Q:「韓国の統計開示が迅速な理由は、1997年のアジア通貨危機(いわゆるIMF危機)が影響しているのか?」)
    A:「それはあると思う。韓国は天然資源が乏しく、人口も少ない。貿易によって経済発展を図る貿易立国が国是であり、そのために迅速な貿易統計開示が不可欠だ」

    Q:「車載用電子部品について開示している国はないのか?」
    A:「やはり自動車産業の先進国と言える米国では開示しているようだ。現在、米国の自動車部品の分類についても調査中である」

    Q:「デンソーや矢崎総業など日系自動車部品メーカーは、韓国に工場進出して本格的な現地生産をしている。こうした在韓日系部品メーカーの対日輸出(Buyback)が韓国の対日輸出増加に影響を与えているのではないか?」
    A:「デンソーが韓国で生産した部品は日本にも出荷されていると思われる。それは当然、貿易統計上は韓国の対日輸出に含まれる。デンソーは韓国ソウルにある自動車部品メーカーの業界団体の展示場にも、かなり大きなスペースを割いて自社部品を展示している」

    Q:「日韓自動車部品の輸出額逆転をどう評価するか?」
    A:「貿易の中身をよく観察すると、韓国側は喜んでばかりはいられない。日本も悲しむ必要はない。日本は日本の強い所で頑張る必要がある」

             

    (協力研究員・江本伸哉)

    ※発表資料のダウンロードはこちらから(433kB)
     参考資料のダウンロードはこちらから(585kB)

 

更新日:2015年11月5日
カテゴリ:研究交流

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