第25回「MAGI会(メディアとAGIの会)」を開催いたしました

アジア成長研究所(AGI)は、2013年7月から新聞、テレビ、ラジオ、電子媒体など北九州で活動するメディアとの交流会「MAGI会」(メディアとAGIの会、2014年9月までの「イクメ会」を改称)を原則として月1回開いています。私どもの活動内容を地元メディアの皆さまにご認識いただき、広く地域社会にお伝えいただく一助とするとともに、メディアの皆さまとの意見交換を通じて地域社会の最新の情報ニーズを把握し、今後の活動に役立てるためです。

第25回「MAGI会」(メディアとAGIの会)
2016年7月12日(火)18時~20時15分@AGI会議室(北九州市・大手町のムーブ6階)
話題

第1部 戴 二彪(ダイ・ニヒョウ)研究部長兼主席研究員:「訪日中国人客の爆買いは続くか?」
第2部 チャールズ・ユウジ・ホリオカ(Charles Yuji Horioka)副所長兼主席研究員:「日米の資産格差を考える」

出席メディア:RKB毎日放送、時事通信社(50音順)
第1部「訪日中国人客の爆買いは続くか?」

(1)「爆買い」とは?
◆爆買いの2つの意味
・1つは訪日中国人客個人の1人当たり消費額(特に買い物代)が非常に大きいこと
・もう1つは訪日中国人客全体の消費額(特に買い物代)が非常に大きいこと
◆日本の期待と不安は、この爆買いが今後も続くかどうかということ

(2)訪日中国人客の推移と近年の急増要因
◆2012年以降、中国は人数、消費額ともに世界最大の国際観光市場国に躍進
・15年に外国へ旅行した中国人は1億2000万人と全世界の1割に達し、そのほとんどが私費旅行
・外国観光支出額も11年の726億米ドル(世界3位)から12年に1020億米ドルに増え、世界一に
◆訪日中国人客の推移
・14年までは韓国、台湾に次ぐ3番手だったが、15年約500万人と初めて1位に躍進(外国人客の約4分の1)
◆近年の急増要因
・所得水準の上昇、特に沿岸都市部での保有資産の急上昇(資産効果)
・中国人観光客へのビザ発給条件の緩和(団体客から個人客へ)
・日本の観光資源、商業施設、秩序・治安の良さ、優れたサービスが好評
・中国内観光地、香港の大混雑、摩擦など観光環境の悪化
・14年11月の日中首脳会談後の訪日旅行への中国社会の世論変化(批判→寛容→支持)

(3)訪日中国人客の旅行行動と爆買いの原因
◆訪日中国人客の旅行行動
・団体客が中心(15年に7割弱、個人客の割合は上昇中)
・買い物が重要な旅行目的の1つ(「爆買い」現象)
・中国人客1人当たり買い物代は15年に16万1974円とダントツ。2位ベトナム人7万5164円、3位香港人7万2145円
・15年の訪日外国人旅行消費額の1位は中国(40.8%=1兆4174億円)、2位台湾(15.0%=5207億円)、3位韓国(8.7%=3008億円)
・11年ごろから中国が消費額では1位
・訪問先は3大都市圏中心(15年で関東40.2%、近畿25.0%、中部15.6%)九州は3.7%(宿泊統計ベース)
◆爆買いの原因
・「関係」を重んじる中国社会の「土産文化」
・日本の商品に対する信頼感(安心感)
・多くの優良製品(日本製、中国製問わず)の価格が中国国内より日本の方が安い
・12年以降の円安元高に伴う買い物の割安感
・中国人観光客の外国購入品に対する中国税関の放任(両国関係への配慮)

(4)訪日中国人客の爆買いは続くか?
◆1人当たり消費額
・中国の税関検査は強化される可能性があるうえ、中国国内製品の品質改善、このところの円高もある
・ここへきて購買商品に変化が見られる。16年1-3月期の中国人客1人当たり旅行消費額は前年同期比11.8%減った
・今後伸び続けることはあまり期待できない
◆訪日中国人客数
・外交摩擦、自然災害などの影響で変動するかもしれないが、総じて拡大するとみられる
・総人口13億人の中国人のうち訪日客はまだ年間500万人弱
・韓国(総人口5150万人、訪日客400万人)、台湾(同2340万人、同368万人)に比べ、増加ポテンシャルは非常に大きい
・両国間で大きな外交・軍事摩擦がない限り、20年には1000万人に達する可能性がある
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★主なQ&A
Q:爆買いはいつまで続くのか?
A:一番予測できない要素は国際政治だ。両国間の外交・軍事摩擦が発生すると、一気に訪日観光が止まる可能性はある。
しかし、正常な状況であれば、中国13億人のうち、都市人口は約7億人あり、沿岸都市部に住む3億~4億人は平均的日本人と同じくらい豊かであり、「一生に一回は日本に行きたい」と考えている。
人々の観光活動の活発な期間を20代~50代として、少なくとも年間1000万人の訪日客はありうると思う。
Q:訪日中国人客にばかり注目が集まっているが、問題はないか?
A:過剰に中国に依存してはいけないと思う。日本の他の主要観光市場国からの訪日客も伸びていってほしい。ただし、現段階では中国人客が4分の1を占めるが、シェアはまだそれほど大きくない。
Q:日本の他の主要観光市場国とは?
A:アジア8か国・地域(中・台・韓・香港・タイ・シンガポール・マレーシア・インド)と欧米7か国(米・加・英・独・仏・露・豪)からの観光客が現在の訪日客の主体だ。
しかし、どんなに努力しても、遠い国からはなかなか来てくれないものだ。距離という要因が、単純な物理的な影響ではなく、経済貿易や社会文化交流など様々な側面を通じて観光客の国際移動に大きな影響を与えている。
Q:訪日中国人客のうち、リピーター(再来客)の割合は?
A:(確認が必要だが)日本の観光庁のサンプル調査によると、6~7割程度が初来日客であり、韓国・台湾の観光客と比べ、リピーターの割合が低い。中国のリピーターは富裕層が多く、食事・宿泊への支出は大きいが、あまり買い物をしない。中間層が爆買いをしている。初来日客とリピーターの旅行行動はかなり違うとみられる。

第2部「日米の資産格差を考える」

(1)背景
◆仏経済学者トマ・ピケティ氏の著書『21世紀の資本』(2013年)
・世界中で所得格差・資産格差が拡大しており、政府が対応しなれば、格差が今後ますます拡大するおそれがあると警告
・ベストセラーになり、格差問題がクローズアップされた
◆私と新見陽子研究員
・共同で格差問題(特に遺産と格差の関連)について研究中
・その研究成果の一部を紹介する
◆資産は
①自分の所得からの貯蓄
②他人(例えば、親)からの移転(生前贈与・遺産)――によって発生する
◆資産格差は
①所得格差
②貯蓄率の格差
③親などからの生前贈与・遺産の格差――によって発生する可能性がある。
このうち③に焦点を当てる

(2)G7の資産格差比較
・G7の中では日本(ジニ係数0.547)は最低で、米国(同0.801)は最大
・なぜ日米の資産格差はここまで異なるのか?
・遺産行動によるものなのか?

(3)仮説
①裕福な人の方が遺産をもらう確率が高い
②遺産を貰った人の方が遺産を残す確率が高い
③遺産行動の親子間の相関が裕福な人の場合の方が高ければ、遺産が資産格差の拡大に貢献する

(4)データの出所
・「くらしの好みと満足度」に関するアンケート調査(2003~2013年)
・大阪大学21世紀COEプログラムの一環
・日・米・中・印で同時実施のうち、日米分のみ使用

(5)遺産動機の強さ
・いかなる場合でも遺産を残したい人の割合は、日本人(32.58%)よりも米国人(同66.41%)の方がはるかに高い
・余った場合だけ遺産を残したい人の割合は、日本人(58.58%)の方が米国人(28.54%)よりはるかに高い

(6)教育投資・遺産を受ける確率の決定要因
・親から子供への「世代間移転」は①教育投資②遺産(生前贈与を含む)に大別できる
・①、②ともに検証する
日本でも米国でも(裕福度は親の学歴、15歳時の生活ぶりで推測)
・裕福な家庭に生まれた人の方が教育投資を受ける確率が高い
・裕福な家庭に生まれた人の方が遺産を貰う確率が高い

(7)遺産を残す確率の決定要因
日本でも米国でも
・裕福な人の方が遺産を残す確率が高い
・親から遺産を貰った人の方が子供に遺産を残す確率が約10ポイント高い
・ただし、遺産行動の親子間の相関は、裕福な人の方が弱い(貧しい人の方が親子間の相関が高い)

(8)結論
◆日本でも米国でも
・裕福な家庭に生まれた人の方が教育投資を受ける確率が高く、遺産を貰う確率も高い
・裕福な人の方が遺産を残す確率が高く、資産格差が次の代に引き継がれる可能性が高い
◆日本でも米国でも
・親から遺産を貰った人の方が子供に遺産を残す確率が高く、資産格差が代々引き継がれる可能性が高い
・つまり遺産は資産格差の重要な原因だ
◆日本人と米国人の遺産行動は驚くほど似ており、どちらの国でも遺産は資産格差の重要な原因になっている
・では、なぜ日米両国で資産格差が大きく異なるのか?
・両国の最も顕著な違いは、遺産動機の強さが異なる点
・米国の方が遺産動機がはるかに強く、これが資産格差の違いをもたらしている可能性がある
・また、米国の方が相続税・贈与税の負担がはるかに低く、これも資産格差の違いの一因である可能性がある

(9)政策提言
◆資産格差を縮小し、すべての国民に平等な機会を与えるためには、相続・生前贈与を抑制すべきで、その1つの手段が相続税・贈与税の引き上げ
◆2015年に日本の相続税の非課税枠が引き下げられ、相続税が事実上引き上げられたが、これは資産格差縮小の観点からは望ましい改正だった
◆ただし、同時に子供・孫の教育費、住宅資金などのための生前贈与の非課税枠が引き上げられ、贈与税が事実上引き下げられたが、資産格差縮小の観点からは望ましくない。
◆ただし、景気への影響についてみると、どちらの改正も評価できる
・相続税を事実上引き上げれば、人々は遺産を減らし、その代わり、自分の消費を増やしたり、子供への生前贈与を増やすはずだ。また、高齢者よりも若者の方が消費性向が高いとすれば、高齢者から子供への生前贈与が増えることによって、経済全体の消費が増え、景気がよくなるはずだ
・しかも、生前贈与への事実上の課税引き下げも高齢者から若者への生前贈与を促進し、それによって教育支出、住宅購入などが促進され、景気がよくなる
・つまり、どちらの改正も景気刺激策としては有効であり、そうした観点からは評価できる
◆したがって、相続税の改正は良いことばかりなので評価できるが、贈与税の改正は良い面と悪い面があり、よかったかどうかは一概には言えない
・相続税・贈与税はほかの政策と同様、色々な効果があり、すべての効果を考慮した上で望ましい政策かどうかを判断しなければならない
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★主なQ&A
Q:遺産が資産格差を生み、資産格差がさらなる遺産をもたらすという具合に連鎖するのか?
A:そのとおりだ。ある種の悪循環が生まれる恐れがあるので、それを相続税・贈与税によって防止する必要がある。
Q:アメリカ人は高校卒業後は実家を出て、親に頼らず、奨学金をもらいながら大学に通ったり、自力で生活を切り開いていくというイメージをもっていたが、いかなる場合でも遺 産を残したい人の割合が66.41%もあるというのは意外だ。
A:確かにアメリカ人は日本人ほど子供の教育費の援助をしないが、それはアメリカの場合のほうが奨学金、教育ローンなどが整備されているからかもしれない。大阪大学のアンケ ート調査の結果を見ると、アメリカ人のほうが子供に対しても他人に対してもより利他的であり、アメリカ人のほうが遺産動機がより強いことも、慈善団体などへの寄付もより多いこともその現れであると考えられる。
Q:「遺産を積極的に残したいと思わないが、余ったら残す」日本人が58.58%もいるのはどうしてか?
A:日本人は将来不安が強いためか、予備的な貯蓄を沢山している人が多い。しかし、病気などの出費が発生しなかった場合は、遺産を残すつもりがなくても、結果的に残ってしまうことが多いのだろう。

 

更新日:2016年7月27日
カテゴリ:研究交流  AGIニュース

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